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TITLE:【試乗記】ゴルフR
100208-GolfR-06.jpgゴルフの新しいハイエンドスポーツ、ゴルフR。これまでとは違い、Rのあとには排気量を示す数字がない。それが何を意味しているのか、探ってみることにしよう。

2010年1月14日、ゴルフRとシロッコRが発表されたのは既報のとおり。

4代目ゴルフの時代に登場した「ゴルフR32」が起源の"Rシリーズ"。RはRacingを意味し、スポーツモデルとして知られるGTIを超える特別な存在として人気を集め、その流れは、ゴルフ5版R32、パサートR36へと続いていく。

これらすべてにあてはまるのは、標準モデルより大きなエンジンを搭載したこと。Rに続く数字が示すのは、まさにエンジンの排気量である。

とくにゴルフの場合、ほとんどのモデルが直列4気筒エンジンを採用するのに対し、R32はかつて"VR6"と呼ばれたコンパクトなV6を搭載して、標準モデルとの違いを見せつけた。パワーアップしたエンジン性能を受け止めるため、駆動方式はFFではなく、4MOTIONと呼ばれるフルタイム4WDに変更。ゴルフのベーシックモデルに4MOTIONが用意されない日本では、なおさら特別なモデルという印象が強い。

100208-Golf R-01.jpgそのRモデルが、シロッコRそしてゴルフRの登場を機に方向を転換。メーカー曰く、そのコンセプトは「排気量神話の終焉(しゅうえん)」。モデル名から排気量を表す数字をなく、ロゴを一新したのは、その意気込みの表れだろう。
そして生まれたシロッコRとゴルフRには、これまでのような3.2L V6ではなく、2L TSIが搭載されている。標準モデルで進めているエンジンの"ダウンサイジング"を、Rモデルでも手がけようというのだ。 

ただし、同じ排気量とはいえ、Rモデルのノーズに収まるのはゴルフGTI/シロッコ2.0TSI用ではなく、ゴルフ5時代の2L TSIをベースに、最高出力256ps/6000rpm、最大トルク33.7kgm/2400〜5200rpmまで性能を高めたEA113型の2L TSIである。この数字はゴルフR32と比べて6ps、1.0kgm優れている。もちろんダウンサイジングの狙いは燃費の向上にあり、4MOTIONのゴルフRが12.4km/L、FFのシロッコRでは13.0km/Lを達成しているのだ。

100208-Golf R-02.jpg100208-Golf R-03.jpg
100208-Golf R-04.jpgRモデルならではの装備も充実。くわしくは前述のニュースをご覧いただくとして、さっそくゴルフRのキーを手に、試乗会場を後にする。
残念なことに、この日の関東地方は明け方まで雪が降り、試乗会場までのアクセスこそ問題はなかったものの、試乗コースとして設定された箱根ターンパイクに足を踏み入れることは適わず、 ゴルフRの本性に迫るにはほど遠い状況だった。おかげで、テンションは下がり気味、撮影にも困ったが、文句をいってもしようがない。気を取り直して西湘バイパスあたりを流してみることにした。

見た目のイメージとは裏腹に、乗り降りの不便さがなく、座っても窮屈ではない専用シートに収まると、ステアリングホイールに施されたピアノブラックのカバー、アルミ製デコラティブパネルの美しい仕上がり、そして、ブルーのニードルがアクセントとなるメーターパネルなどが、新鮮な印象を与えてくれる。

イグニッションキーを捻ると、太いエギゾーストノートがキャビンにこだました。R32の時代に比べればおとなしいが、GTIよりも格段に勇ましいサウンドだ。2.0 TSIと6段DSGとの相性はバッチリで、発進から実にスムーズ。しかも、走り出しはGTIよりもひとまわり力強い印象を受ける。4MOTIONのおかげで、急発進を試みても強大なトルクをもてあますことはない。その点、シロッコR(シロッコ2.0TSIもそうだが)は、トルクステアこそ顔を出さないが、場合によってはフロントアクスルが振動に見舞われることがあり(いわゆるアクスルトランプだ)、ハイパワーFF車の弱点をさらけ出すことになる。

アクティブシャシーコントロール"DCC"が標準装着されるゴルフRのサスペンションは、GTIよりも一段と締め上げられた印象。一番ソフトな"コンフォートモード"でも硬さが伝わるものの、街乗りするうえで十分に許容範囲に収まるのがうれしい。

有料道路に入ったところで、アクセルペダルを踏み込んでみる。キャビンにはエギゾーストノートとエンジン音が充満し、荒々しさすら感じるが、加速はいたってスムーズかつリニアで、あっというまに制限速度に達してしまう。中速から高速の伸びも頼もしく、レッドゾーンが始まる6500rpmを過ぎてもなお、勢いは衰えない。

ただ、TSIエンジンに共通する特徴として、トルクの盛り上がり感というか、回転が上がるほどに勢いづく感じがなく、良くも悪くも呆気なく速いのが、物足りない。その点、自然吸気の3.2L V6はメリハリが効いていて、緻密な感触もドライバーの心を大いに刺激したものだ。

100208-Golf R-07.jpgゴルフRの2.0 TSIに同じフィーリングを求めるのは酷というものだが、この部分がRモデルとしての特別な印象を希薄にしているのは確かであり、ゴルフRは先代のR32よりもゴルフGTI寄りのクルマになった気がした。
100208-Golf R-08.jpgFFどうしのシロッコRとシロッコ2.0TSIなら、さらにその距離は縮んでくる。ただ、シロッコの場合は、Rと2.0TSIの価格差が58万円と小さく、考えようによってはシロッコRはお買い得かもしれない。
一方、ゴルフRとゴルフGTI(18インチ+DCC)では、118万円の違いがある。ゴルフRはレザーシートや純正ナビのRNS510が標準で、しかも、FFが4MOTIONに変わることを考えると一概に高いとはいえない。ただ、クルマのキャラクターを左右するエンジンにかつてほどの違いがないことを考えると、僕ならGTIを選んでしまいそうだ。

ひょっとすると、ワインディングロードやサーキットが舞台になると、ゴルフRの印象はまた変わってくるのかもしれない。ということで、結論はお預け。近いうちにじっくりと試してみよう。

(Text by S.Ubukata)
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